福岡城の天守閣が復元されない理由は?反対運動や資料不足の事情を調査
日本百名城に選ばれる、福岡城は福岡のシンボルで、重要な観光スポットです。天守閣の存在がはっきりしていないので、復元に反対する声も多く、現在も天守閣はありませんが、江戸末期から残る多聞櫓は重要文化財に指定されています。興味深い福岡城復元問題を調べてみます。
福岡城の天守閣が復元しない理由を調査!
九州には名城と呼ばれる城が多数存在します。加藤清正公の熊本城、細川忠興公の小倉城などは美しい城郭が特に有名です。今回ご紹介する福岡城は、戦国武将黒田孝高(官兵衛)・長政親子が築城し、日本名城100選に入る名城として名高い城です。
名城100選の福岡城ですが、天守閣はありません。天守閣の復元という話題が出たこともあるようですが、反対意見も多かったようで、未だに実現には至っていません。福岡城の天守閣が復元されていない理由を調査してみたいと思います。
福岡の歴史スポット「福岡城」
福岡城ぐるり一周なう。 pic.twitter.com/WyXUghIbO1
— 若狭守の武者 (@tatibana_ason) September 25, 2020
福岡は飛鳥時代、7世紀後半から奈良・平安にかけて太宰府が置かれていた場所です。他にも数々の重要な史跡が残ります。福岡城はその中でも重要な歴史スポットで、史跡巡りや観光ルートに外せない場所となっています。
福岡城があった場所は、飛鳥・奈良・平安時代の迎賓館ともいえる「鴻臚館」がありました。福岡は、古代日本の外交に大変重要な場所でした。「鴻臚館」は平安京と難波(現在の京都と大阪)にも存在しましたが、発掘発見されたのは福岡のみで、とても貴重です。
「福岡城」の歴史や貴重な文化財
福岡城は舞鶴城、石城の別名を持ちます。1601年に築城が開始され、7年の月日をかけ完成しました。福岡城は平山城で、三の丸・二の丸・本丸の周りを大きな外濠が囲んでいました。47基の櫓、10棟の城門があり、広さは約24万平方メートルに及びました。
国の重要文化財に指定されている「多聞櫓」は、築城当時の位置にそのまま建っています。多聞櫓は福岡城で唯一、築城当時の様子を伺うことが出来る遺構です。
黒田長政が築城
福岡城鴻臚館まつり。
— てっしぃ~ (@teshi729) March 31, 2019
今年も高島福岡市長が黒田長政でノリノリ♪ pic.twitter.com/ij4KZSS96d
福岡城は戦国武将黒田長政公により築城されました。1600年の関ヶ原の戦いでの功績を認められ、黒田孝高(官兵衛)・長政父子は筑前を与えられ、旧領主小早川秀秋の居城だった名島城に入城します。その後福崎丘陵を新城地に選び、1601年築城が開始されました。
福岡という地名は、黒田家ゆかりの地、現在の岡山県の備前国福岡の地名にちなんで改められたそうです。福岡城は7年後に完成し、1871年明治4年の廃藩置県まで、黒田氏の城として存在しましたが、その後多くの建物が解体され一部は移築されました。
国重要文化財の多聞櫓
多聞櫓 #福岡城 https://t.co/tNifPmlbUz pic.twitter.com/kR6OQr6Vq5
— 攻城団フォトギャラリー (@kojodanphoto) January 16, 2020
福岡城内の南西角にある「多聞櫓」は、1971年昭和46年に国の重要文化財に指定されました。30間もの長さの西平櫓と、二重二階の妻造隅櫓の構造です。内部は16の部屋があり、武器庫や倉庫などに利用されていたと言われています。
多聞櫓は、福岡城に存在した櫓で唯一、当時と同じ場所に現存している遺構です。1972年昭和47年に解体修理が行われ、平成30年には壁の亀裂やしっ漆喰の塗り替え、割れた瓦の交換などの補修工事が完了し、多聞櫓は美しい姿に甦りました。
天守台跡には展望台が!
九州クイズ連合のヘッダーどっかで見たことある景色だな〜と思ってたけどもしかして福岡城の展望台からの景色ですか? pic.twitter.com/0tbw3jZrGS
— Kanako (@Kanako_0504_) April 21, 2019
福岡城の天守台は、現在は礎石のみが残され、展望台となっています。展望台からは福岡の街が一望に出来ます。福岡城天守台は大中小の3つの天守台から構成される連立式天守台です。大天守台は東西約25メートル、南北約22メートルの大きさがあります。
外交施設だった「鴻臚館」
大濠公園15kmラン。
— ヒマラヤ (@sij72) January 19, 2019
ぐるぐる回るの飽きたので、福岡城、鴻臚館跡まで周回してきた。
芝生広場とか広々として気持ち良かった。 pic.twitter.com/PNDTInuP7D
福岡城があった場所には、飛鳥・奈良・平安時代に「鴻臚館(こうろかん)」がありました。「鴻臚館」は、平安京、難波、筑紫の3か所に配置され、外交や交易に関する公的施設で、中国や朝鮮からの使節や商人をもてなしたり、使節の送迎などに使用されました。
鴻臚館は平安京と難波(現在の京都と大阪)にもありましたが、発掘されたのは福岡の鴻臚館だけです。1987年昭和62年、平和台球改修工事の際、場外野席の発掘調査で発見されました。現在は展示館があり、出土品を見ることも出来ます。
住所 | 〒810-0043 福岡県福岡市中央区城内1 |
電話番号 | 927210282 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | 12月29日~1月3日 |
入場料 | 無料 |
URL | 福岡市観光経済文化局 |
様々なイベントも開催
福岡城さくらまつり🌸は例年通りに行われる予定です。#桜を見る会 pic.twitter.com/GvZmypP0LI
— 黒田長政@関ヶ原2020 (@tikuzennnokami) November 13, 2019
福岡城内では、年間を通して様々なイベントやお祭りが行われています。2月下旬には舞鶴公園で梅まつり、3月下旬から4月上旬にかけては桜まつり、4月下旬には藤まつりが開催されます。ライトアップ、グルメ屋台、各種イベントが開催され大いに盛り上がります。
「福岡城」の復元問題とは?
福岡城行って来ましたーー!!潮見櫓と大手門、名島門、多聞櫓 pic.twitter.com/Lfn7SXYTI7
— あぺ🌤️しょーこ (@ape_ms) April 1, 2018
福岡城には天守閣が復元されていません。2012年に当時の福岡市長が「福岡城天守閣を復元したい」と言ったことから、福岡城天守閣復元問題は始まりました。2014年からの福岡城整備計画は、潮見櫓、花見櫓松の木御門の復元などが中心でした。
存在が不明瞭な天守閣
福岡城に天守閣があったかどうかは未だに不明です。天守台発掘調査の際、瓦などが発見されたことから、建物が建っていたのは間違いありませんが、天守閣が存在した証拠は見つかっておらず、資料も不足しています。
福岡城を描いた最古の絵図に、天守閣が描かれていないことから、天守閣は無かったというのが通説でした。徳川家に遠慮して、大きな天守閣は造らなかったとも言われています。黒田如水の遺言で、天守閣は決して作らないようにと言ったという説もあります。
ところが最近になって、最近細川家の書状などから、福岡城が建って間もないころに天守閣が存在したのではないかと伺わせる資料が見つかり「天守閣存在説」が浮上しました。
全国から復元反対の声多数
当時の福岡市長は天守の復元は個人的希望での発言としていましたが、この発言に対して多くの批判反対意見がありました。建物を復元する場合、きちんとした資料に基づいて行わなければいけません。福岡城天守閣の資料はかなり不足しています。
昭和30年~40年代には、観光目的の模擬天守なども多く作られましたが、国の史跡である福岡城に史実に基づかない模擬天守はいらないと、全国から反対の声が多くよせられました。
潮見櫓にまつわる混乱
福岡城③ 伝潮見櫓と大手門
— 長門四郎左右衛門 (@pzkw42) September 15, 2019
伝潮見櫓は実際の名称は不明で、場所も本来とは異なる位置に移築
(枡形に対してこのように櫓を建たせるのは無理がありすぎ……)
大手門は近年失火により損傷したものを復旧修理 pic.twitter.com/w5RVZMvmhP
福岡城の下之橋御門横に「伝・潮見櫓」と呼ばれる櫓があります。福岡城には47基以上の櫓があったとされていますが、大半が明治維新以降解体されました。潮見櫓と花見櫓は崇福寺に移築され、仏殿として利用されていました。
この際、何かの手違いで潮見櫓は月見櫓だと思われてしまいました。1991年平成3年に、復元のために福岡市が買い取り、調査したところ、月見櫓だと言われていた櫓の中から、潮見櫓であるという棟札が発見され、勘違いが発覚しました。
長らく潮見櫓とされてきた下之橋御門横の櫓は「太鼓櫓」ではないかと言われていて、現在は「伝・潮見櫓」と案内板に表示されています。福岡市はこの櫓を本来この櫓があった、本丸に移築復元する計画だそうです。
徐々に進む復元計画
福岡の天守閣復元は、反対の声が大きかったこともあり、計画はありませんが、天守以外は復元作業が進められています。福岡市は2013年平成25年に、「福岡セントラルパーク構想」を発表。本丸・二の丸・三の丸は長い時間をかけて復元整備を行っていく予定です。
「福岡城」へのアクセス&駐車場情報
福岡城は天守閣はありませんが、黒田孝高・長政が建てた城で、福岡の重要な歴史観光スポットです。福岡の観光には欠かせない場所となっています。重要文化財指定の多聞櫓も必見です。福岡城へのアクセス方法や駐車場情報をご紹介します。
アクセス情報
福岡城へは地下鉄の利用が便利です。地下鉄「赤坂」または「大濠公園」で下車、徒歩約8分です。車を利用する場合は、福岡空港から約20分です。
駐車場は?
福岡城見学には「舞鶴公園第一駐車場」が便利です。68台駐車可能で、料金は1時間150円です。12月29日~1月3日は閉鎖しています。4月1日~ 9月30日には、71台駐車できる第二駐車場も利用できます。福岡周辺には他にも有料駐車場がありますので利用できます。
福岡城の基本情報
住所 | 〒810-0043 福岡市中央区城内 |
電話番号 | 092-711-4666 |
営業時間 | 見学自由 |
料金 | 無料 |
アクセス | 地下鉄「赤坂」または「大濠公園」で下車、徒歩約8分 |
駐車場 | 舞鶴公園第一駐車場 1時間150円 |
URL | 福岡市経済観光文化局 |
今後が気になる「福岡城」の復元問題
福岡城の天守閣復元は、反対意見も多く実現は難しそうですが、47基以上あったとされる櫓の中には復元が計画されているものもあります。福岡市では、大切な史跡を保存していくため「福岡城跡整備基本計画」を推進しています。
計画を進めるために「福岡みんなの城基金」を設置し寄付金も集めています。平成30年には寄付金によって、多聞櫓の補修が行われました。今後は潮見櫓や上之橋御門の復元が予定されています。資金不足が懸念される中、福岡城の復元問題に注目していきましょう。