「阿蘇山ロープウェイ」が再建廃止になった理由は?火山活動の活発化が原因?
阿蘇山ロープウェイは、世界一のカルデラ阿蘇山を間近で見られる世界でも初めてのものでした。度重なる火山活動と熊本地震の悲惨さが阿蘇の風物詩を消してしまったのです。その阿蘇山ロープウェイの再建が廃止になった原因をまとめてみました。
「阿蘇山ロープウェイ」とは?
阿蘇山からの、ロープウェイ pic.twitter.com/DHSvCuyg1f
— 居酒屋&カキ小屋「はやっとぉ」 (@Hayatto4649) June 30, 2016
「阿蘇山ロープウェイ」は、世界初の活火山そばで運行するロープウェーでその歴史は古く、営業開始は1958年まで遡ります。ロープウェーを使って火山活動を上空から見学できる画期的な施設として開業しました。
世界でも最大と言われるカルデラ火口見学には日本国内だけでなく、海外からも多くの観光客が阿蘇山を訪れていました。そして、1回に付き最大91名まで阿蘇山ロープウェイは運んでいました。
ロープウェーの運行区間は、登山バスの阿蘇山上終点「阿蘇山西駅」から火口縁の「火口西駅」までの、およそ高低差108mを所要時間4分で結んでいました。
世界初の活火山で運営されていたロープウェイ
実は阿蘇山ロープウェイのように活火山でロープウェイを利用して火口を見る試みは、世界でも初めてで、火山活動を見物する国内外の多くの観光客を火口縁へ運んで、自然の雄大さを教えてくれていました、
あえて四方を広い窓にした設計によって乗客が窓から阿蘇山特有の荒涼とした大地と雄大なカルデラを見下ろすことができ、通常は15分間隔ですが、乗客が多い場合は運行間隔を短くして運用していたのです。
「阿蘇山ロープウェイ」休業へ
阿蘇山西側の登山バス終点から火口近くまでの858メートルを約4分で結んでいた迫力ある火口見学が人気で、最盛期には年約50万人が利用したという阿蘇山ロープウェイですが、噴火警戒レベル2で立ち入り規制される火口1キロ圏内にある阿蘇山ロープウェイは、これまでにもたびたび火山の活動で運休をよぎなくされました。
それが2016年の熊本大地震のあおりを受けてロープウェイの支柱が4本破損し、さらに火山ガスが発生し運行装置まで故障してしまったのです。阿蘇山ロープウェイの最終運行は2014年8月でした。
ロープウェイ阿蘇山西駅の2階はエンターテインメント施設だった
阿蘇山ロープウェイのりば。ロープウェイは動いてないけど、営業してる。火口から1キロだけど、風評被害で観光客が減ったらしい。いつもは見れない迫力ある阿蘇の噴煙なのに。 pic.twitter.com/tu6DK0YqQB
— ドラポケ兄ちゃん (@dorapokeaso) December 18, 2014
ロープウェイ阿蘇山西駅の2階には阿蘇山ロープウェイが運営するエンターテインメント施設「阿蘇スーパーリング」がありました。ここでは主に阿蘇山の見どころを紹介するスペースとして利用されていました。
「リング」とは阿蘇外輪山をモチーフにしたもので、阿蘇の巨大ジオラマ模型を用いたプロジェクションマッピング映像を体験することができました。
また2階の展望レストランのガラス張りの窓から草千里やかつての火口跡が見渡せ、冬は外気が氷点下になる銀世界、阿蘇の景色が堪能できる施設でした。また阿蘇の名産あか牛など地元の食材も楽しめる人気のレストランがありました。
日本最大級のプロジェクションマッピングも屋内常設
運休中の阿蘇山ロープウェイ駅で上映中の阿蘇スーパーリング、かなり面白かった。白い地形模型にプロジェクションマッピングで景色を上映するのは想像以上の迫力。 pic.twitter.com/CfRcbcFHNJ
— 大貫剛 (@ohnuki_tsuyoshi) December 10, 2014
日本最大の直経6mの阿蘇カルデラを再現した巨大ジオラマ模型を用いたプロジェクションマッピングの「ジオマラスクリーン」と壁面の4面マルチ映像が連動した映像展開があり、子供をはじめ、修学旅行生、観光客などにも人気の施設でした。
プロジェクションマッピングの「ジオマラスクリーン」では、阿蘇山ならではのダイナミックな臨場感を味わえ、通常では味わえない、誰も体験したことのないスリリングな火山探検を疑似体験できたのです。
熊本地震と火山活動で被害
つい先日から入山出来るようになった阿蘇山のロープウェイ駅。
— おなま (@NAMA_RyuseiDate) April 27, 2018
噴火の影響で廃墟になってる。 pic.twitter.com/2uInhU7CRI
阿蘇山ロープウェイは、長い歴史の中で度重なる火山活動で運行が中止されて来ました。そして2016年平成28年4月14日から数日間に渡る熊本地震で、既に火山活動で停止していたロープウェイは破損がひどい状態でしたが、地震が追い打ちをかけて阿蘇山ロープウェイ駅や支柱が被害に遭い運行の停止を余儀なくされました。
駅舎やゴンドラの運行が困難に
火山弾の砲撃を受けた阿蘇山ロープウェイ駅 pic.twitter.com/G2qLgBv59r
— い つ ね む (@shiromachn) May 30, 2018
度重なる噴火活動による運休が相次ぎ、さらには2016年4月に熊本地震、同年10月に再び起きた大規模噴火により、駅舎やゴンドラなどに甚大な被害が生じ、この時点で当面の運行再開は困難な状況となりました。その後、旧駅舎は取り壊されて撤去されました。
当時は、火山活動の動きを注視し、阿蘇山ロープウェイの運営再開に向けて工事費用と復旧工事開始時期について県や国と検討していました。
ロープウェイ代行バス「阿蘇山ループシャトル」の運行開始
阿蘇山ループシャトルのメルファ。 pic.twitter.com/iHcVL3Ve6f
— AQUAルーミー (@K81QEh3aZqa6i0f) June 15, 2019
阿蘇山ロープウェイを運営する九州産交ツーリズム株式会社は、阿蘇山ロープウェイの再開が見通せない中で「阿蘇山ループシャトル」の運行を決めました。阿蘇山ループシャトルの登場で、阿蘇山中岳の西側から火口の縁までを往復する見学する事ができるようになりました。
「阿蘇山ロープウェイ」再建廃止に向け撤去
阿蘇山ロープウェイは、2015年の大規模噴火の前年2014年8月に噴火警戒レベルが上がり運休、そして再建を検討をしていましたが最終的にこれ以上維持すればコストがかかり、しかも火山活動が活発化する中で、いつ工事が再開できるか見通せないため、再建を諦め解体撤去について検討し廃止が決めました。
一時は運行再開に向け着工
阿蘇山ロープウェイの火口西駅。いまだ噴火で被害を受けた跡が生々しく残っています。2017年2月7日に阿蘇山の噴火警戒レベルは1に引き下げられましたが、火口から約1kmは今も立ち入り禁止です。(高) pic.twitter.com/JyuxBCSsKx
— 朝日新聞航空部 (@asahi_aviation) March 10, 2017
一時は運行再開を望む声に応えて、再建にかじを取っていた阿蘇山ロープウェイは、再建費用の工面について国と県が事業費の4分の3を補助する地震関連の復興事業制度「グループ補助金」を使うことで合意し、全面ガラス張りのゴンドラを運行し、山頂駅まで3.5分で結び、山頂駅舎を天空カフェにするなど復興へ期待も大きく、再開への大きな前進だと思われていました。
噴火警戒レベル2が続き再建工事を中止
入山規制中の阿蘇山、ロープウェイ乗り場に…
— 瀬之本 (@senomotomb) March 8, 2016
脇道にはフツーに火山灰が積もってる pic.twitter.com/De3mkPKrqV
しかし、工事の準備が進む中で、噴火警戒レベル2の状態が長引き、火口近くの駅舎の再建工事ができない状態が続いていいたことから、この段階でいったん再建工事を中止することを決めました。
火山活動の終息が見通せず廃止が決定
阿蘇山ロープウェイ駅舎建築工事の現場。現在工事は停止中。 pic.twitter.com/dFT5KRewg8
— かばきち (@tokabakichi) February 23, 2020
そして最終的に、火山活動が長期化する可能性があり、火口1キロ圏内への投資は困難であると結論が出て、別のやり方で阿蘇観光に貢献する案を考えることになったのです。
噴煙を間近で見られるロープウェイの再開は、日本だけでなく海外からも期待されていたのですが、残念ながら阿蘇山ロープウェイは廃止になることが決定しました。現在は全て解体撤去されてその姿は見ることができません。
61年の歴史に幕
1枚目…2015年1月3日の阿蘇山ロープウェイ火口西駅
— ..ren (@NR625ren) February 8, 2017
2枚目…2017年1月3日の阿蘇山ロープウェイ火口西駅
2015年9月の噴火か2016年10月の噴火かわからないけど、駅舎はボロボロだ。 pic.twitter.com/pN6pnyRFNw
1958 年に開業し、阿蘇山西側の登山バス終点から火口近くまでの 858 メートルを約 4 分で結んでいた阿蘇山ロープウェイは、先の見通せない火山活動のため正式に61年の幕を下ろすことになったのです、
最盛期には年約50万人が利用
これほど無残に破壊された山頂駅舎を再建しようとしてたのね。
— 早川由紀夫 (@HayakawaYukio) December 24, 2019
(爆発的噴火による噴石などで被害を受けた阿蘇山ロープウェーの火口西駅=熊本県で2017年2月7日午後4時8分、毎日新聞社ヘリから和田大典撮影) pic.twitter.com/Sb9aaETHDM
阿蘇山ロープウェーは1958年に開業。中岳火口の見学区域と、ふもとの阿蘇山上広場を結び、最盛期には年50万人もが利用をしていた阿蘇山ロープウェイは、その大半が火山噴火レベル2の区域に入るため、火口側の駅舎の建設着手の見通しが立たないうえ、火山活動の推移によっては経営も厳しくなることから、再建計画は断念し廃止・撤去となりました。
阿蘇山ロープウェーは阿蘇の風物詩であり、のどかな風景の象徴でしたが、2016年の熊本地震の爪痕は大きく、またひとつ阿蘇山から貴重な思い出が消えて行ったのです。
「阿蘇山ロープウェイ」の現在の様子
正式に2019年12月24日に建設中止され阿蘇山ロープウェイは全て解体撤去されて、バス輸送を中心とした代替サービスを行っています。
バスループシャトル運行に切り替え
阿蘇山火口、噴火でロープウェイが崩壊していたので、代わりにくまモンが乗ってるシャトルバスが出てました🚠
— 上田マリノ@エコあそび研究中♡ (@marino519) August 30, 2018
熊本ラーメン食べたかったなぁ…🍜? pic.twitter.com/XrMHb1BYLP
世界最大級のカルデラ「阿蘇」の中心に位置する中岳火口、山々が連なる壮大な景色、そして火口にはエメラルドグリーンの湯だまりと噴煙が立ち上がる光景が見学できる阿蘇山ループシャトルバスが現在運行されています。
阿蘇山火口見学バスも運行
阿蘇火口線はいいぞ pic.twitter.com/BpNXJCf9Aa
— なかんづくイモビトネ (@thsc782_407) September 15, 2016
その他、現在、JR阿蘇駅前から、草千里と阿蘇山西駅を結ぶ「阿蘇火口線」があり、JR阿蘇駅前発1日4便、阿蘇山西駅5便が2020年11月1日現在運行しています。
路線バスですので、ご予約は不要で、バスの中から、阿蘇の雄大な大自然を眺めることができます。
所要時間
2020年11月1日現在、阿蘇山火口シャトルは阿蘇山西駅発から火口までを1日4往復で所要時間およそ5分、火口見学におよそ35分となっています。阿蘇火口線は阿蘇駅~草千里・阿蘇山西駅間を運行していて所要時間およそ35分です。
料金
料金ですが、2020年11月1日現在で、阿蘇山火口シャトルは、片道 大人 500 円、小児 250 円で、阿蘇火口線は、阿蘇駅から阿蘇山西駅まで片道650円ですが、お得な1日乗車券もあります。料金は大人1人1300円、小人はその650円です。
バスループシャトル運行の基本情報
名称 | 阿蘇山火口シャトルバス |
電話番号 | 0967-34-0211 産交バス株式会社 阿蘇営業所 |
「阿蘇山ロープウェイ」は惜しまれながらも廃止
2016年の熊本地震や、半年後の阿蘇中岳の噴火で被災した阿蘇山ロープウェイは、2020年の運行再開を目指していましたが火山活動の終息が見通せない中、経営リスクもあることから廃止が決まり撤去されました。
最盛期には年間50万人の人を運んだ阿蘇山ロープウェイですが、61年の幕を下ろし、惜しまれながら廃止されその雄姿は全て撤去となり現在は、バスが代行するようになりました。